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執筆者の写真Nobuhiro Kawai

達成感

今年の仕事を振り返る。

すると、すべてが完成したという仕事があまりにも少ないことに気がついた。

いわゆる未完成。

ここ数年の自分の仕事の打ち出し方である数年にわたって少しづつ作り上げるというのが浸透してきたのかな。

未完成とはいえ決して消化不良だとか不満足だとかというネガティブな感じは全くない。

むしろその場面場面での達成感のほうがはるかに強く、次へのイメージもどんどんと膨らんでゆく。

いろんな現場を経験していると自分はつくづく現場でしか考えることができないことに気づく。

雪が降ったここ最近も達成感を味わらせてもらった現場を経験した。


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市内のイタリアンレストラン。

オープン当時から景観づくりにたずさわらせてもらっている。

今回の依頼は店舗にあるウッドデッキを壁と屋根で半室内にしたいということであった。

そんな依頼から数ヶ月、雪が積もる前に完成かと思いきや一部変更と追加で年内には終わらずに未完成となり、春が来る前にもう一度現場に入ることになった。


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今の感じも自分的には悪くはないと思うが、確かにもっとよくできる方法があるとも思う。

ただ、お金をかければいいものができるかといえばそうではなく、自分らしさを出しつつ、かつどこにでもあるものを使ってどこまでいいものを作り出せるか。

そんなことを思い最初の景観づくりを考えたことを思いだした。

今回も思いは一緒である。

レストランで出される料理と同じ思いを景観でも表現することがこのレストランには必要なことなのではないかと思っている。


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工事中という看板を早く撤去できるようにアイディア振り絞って提案させてもらおう。

もう少し待っていてください。


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そしてもう一つの未完成。

でも、外の工事を残して室内が今日完成した。

まきストーブに火入れをしてこれからの季節にも耐えられる空間になった。


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昼の太陽に照らされる空間もいいけど、陽が沈んだあとのオイルランプとロウソクの灯りが空間を一層良く感じさせてくれる。

窓を開ければ川の流れる音だけが耳に入ってくる。

そんな空間には無音の灯りが必要であった。


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自分が過去に経験した、心地よく考えさせられきっかけをくれた時間。

少しではあるけれど作ることができたと思う。


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自分で作った柾板も、らしさを表現できたように思える。

全てがまだ出来上がっていないがこの柾板を壁に張り終えた時の達成感はなんとも言えない感じだった。


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そして、今日実際に火を灯してみて作ってよかったと思えた。

これからここがどのような空間になっていくのか、していくのか。

言えることは大切な場所にしたいということ。

それがわかってくれる人にたくさん来てもらい、思いを伝えられたらと思う。


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冬になったばかり。

ミズナラが芽吹く春までにもう一仕事待っている。

少しこの空間で頭を休ませて新たな想像を膨らませたいと思う。

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